本記事は元バーテンダーが、培った知識や経験を基にお酒の歴史や飲み方、カクテルの作り方などを紹介しています。また、疑問などにも対応していきますので、コメント欄にメッセージを頂けたらと嬉しいです!では参りましょう!
今回ご紹介するカクテルはジンベースを代表するジントニックと同じくらいポピュラーなカクテル『ジンフィズ』。
某漫画でも語られていますが、ステア・ビルド・シェイクと言ったカクテル技法を総動員しなければ作成できない為、バーテンダーの技量を図るカクテルとも言われています。
ジンフィズはジンとレモンの爽やかな香りが特徴のロングドリンク
冒頭でも触れましたが、様々な技法を駆使するジンフィズは比較的手間のかかるカクテルです。使用する材料も前回までに紹介したカクテルよりも多く、複雑です。
シェイクすることで空気と一緒に混合されたジンとレモンジュースが織りなすアルコールの角が取れたまろやかな味わいは、ステアやビルドでは作ることの出来ないものです。ジンとレモン由来の爽やかな香りとその口当たりの良さはレディーキラーと言っても過言ではないでしょう。
では、そんなジンフィズのレシピを見てみましょう!
ジンフィズのレシピ

カクテルデータ
- カクテルタイプ:ロングカクテル
- 作成技法:シェイク・ビルド
- ベース:ジン
- アルコールの強さ:★★★☆☆
- 色合い:透明色
- 炭酸の有無:有り
- 味わい:ジンとレモンの爽やかな香りと酸味が特徴。
材料
- DRY GIN (ジン)・・・45ml ※1
- LEMON JUICE (レモンジュース)・・・20ml ※1
- SYRUP (シロップ)・・・10ml ※1 ※2
- SODA (ソーダ)・・・適量
- FRESH LEMON 1/8 (フレッシュレモン1/8)・・・1個 ※3
- MARASCHINO CHERRY (マラスキーノチェリー)・・・1個
- ICE (アイス)・・・適量
※1 上記のレシピは標準的なものです。好みに応じてバランスを変えてみてください。
※2 シュガーシロップの代わりに砂糖を使用するレシピもあります。その場合には2tsp。
※3 レモンは1/8のくし切りの代わりにスライスレモンを使用するレシピもあります。
必要な道具
- タンブラー
- バースプーン
- シェイカー
- マドラー
- カクテルピック
作り方の手順
- フレッシュレモンを1/8のくし切りにし、グラスに挿せるように切り込みを入れる。カクテルピンでマラスキーノチェリーとカットレモンを刺し、ガーニッシュを作る。
- シェイカーにドライジン・レモンジュース・シュガーシロップ・氷を入れ、シェイクする。
- シェイクした材料をタンブラーに注ぐ。この時、シェイカーに入っている氷をグラスに適量入れる。
- 2のグラスにソーダを注ぎ、バースプーンでビルドする。
- 氷が足らないようであれば足す。
- 1のガーニッシュをグラスの淵に挿し、マドラーを入れて完成。
上記のレシピの材料を一部変更する事で出来るカクテル
- トムコリンズ:ドライジン → オールドトムジン
- FIZZ系カクテル:ドライジン → 各種リキュール、スピリッツ
元バーテンダーが、美味しくなるちょっとしたコツとか色々教えちゃいます!
バーテンダー時代に学んだ美味しいジンフィズを作るためのコツを伝授します!守って欲しいポイントは次の6つ。
- レモンの酸味とシロップの甘味のバランスを考える。作る環境によってはレシピの分量を変更し、自分の味覚で調整する。
- シロップは糖分濃度が高いものを使う。糖分が結晶化する手前ぐらいの濃度の自家製シロップが理想。
- レモンジュースはコンクではなく、フレッシュを使う。
- ジンは冷凍しておく。
- シェイクで意識しておきたいのは、「素早く振ること」と「中の材料がしっかり動いていること」。
- ソーダはガス圧の高いものを使用する。
ジンフィズに合う料理は?

ジンフィズはドライでは無いにせよ、さっぱりとした味わい、ジンとレモンの爽やかなフレーバーをもあるので、基本的に料理全般に合うカクテルです。また、アルコール度数が15度前後と適度にボリュームがあるので、前菜よりはメインに合わせるとよりマッチすると思います。特に脂ののった魚とかバター系のソースと合わせると最高です。
私のオススメは舌平目のムニエルです。焦がしバターのソースがあれば、もう言うことはありません。
関連するカクテル
- 各種FIZZ系カクテル
- トムコリンズ
FIZZ(フィズ)ってソーダの弾ける音って知ってました?
今回ご紹介のジンフィズは1888年にアメリカの南部、ニューオリンズにある「インペリアル・キャビネット・サロン」のオーナー、ヘンリー・チャールズ・ラモス氏が初めて考案したとされています。経営する店で提供しているレモンスカッシュにジンを入れて、ジンフィズと名付けて販売したのが一般的な説になっています。

ですが、もう一つ説があって、それはかの有名なバーテンダー、ジェリー・トーマス氏が考案したというものです。
彼が1887年に出版した著書「バーテンダーズガイド」にジンフィズの記載があり、これがジンフィズについて述べられた最古のものだとされています。
つまり、先の説のラモス氏が考案したとされる1888年よりも前にジェリー・トーマス氏が考案していたということです。
時系列や情報を見ると、どうやらジェリー・トーマス氏がジンフィズを考案したという後の説が正しいように思われます。
では、前の説のラモス氏はどうなっているのかというと、同氏は1888年、ジンフィズに卵白や生クリーム、オレンジフラワーウォーターを加えてアレンジしたニューオリンズ・フィズを創作していて、これがのちにラモス・ジンフィズとして現在にレシピが伝わっています。
以降、便宜上、前の説をラモス説、後の説をトーマス説とします。
ここで、私が疑問に思うのは、トーマス説が正しいとするならば、ラモス説で出てきた「レモンスカッシュにジンを入れた」という一文はどこからきたのでしょうか?
つじつま合わせに後になって誰かが付け加えたということは十分にありうる話ですが・・・

ちなみに、ネットやカクテルレシピ集、大手飲料メーカーのカクテルレシピサイトに記載されている説はほぼ100%、ラモス説です。
もっとも、ブログなどに書かれたものはどこかからの参考や引用が多いので別にして、市販されているレシピ集や大手飲料メーカーのレシピサイトには「販売した」とか「存在していた」、「始まりとしている」など少し濁した記載をしています。
正直、ラモス説は「そうらしい」というだけで、裏付け出来るものが見つけられなかった為、私は出版物という証拠のあるトーマス説を支持します。
しかし、ラモス考案説は記録がないだけで、もしかしたら、ジェリー・トーマス氏の前に考案していたという可能性も十分にあると思います。
いずれにしても、130年以上前の話なので本当のところはわかりません。もし、詳細を知っている方はコメント蘭にメッセージをいただけると助かります。
ところで、皆さんはジンフィズの「フィズ」が何を表しているか知っていますか?
「フィズ」とは、ソーダの炭酸が弾ける時の「シュワシュワ」という音を表しています。と言っても日本人にはあまりピンと来ないですよね。「フィズフィズ」したソーダなんてなんか違和感がありますよね。
また、「フィズ」はカクテルのスタイル名でもあります。スピリッツなどのベースにレモンジュース、シロップ加えシェイクしたものにソーダを注ぐ処方を「フィズ」と言います。
なので、好みのお酒をベースにするだけで簡単にフィズ系カクテルを作ることができます。
特に「オールド・トム・ジン」という黒猫がラベルに描かれた少し甘みのあるジンをベースに、コリンズグラスを使用して、フィズスタイルにすると「トム・コリンズ」というカクテルになります。
これはイギリスでジンフィズと同時期に作られた為、兄弟カクテルとも言われます。このカクテルについてはまた今度ゆっっくりと。
今回のまとめ
いかがでしたでしょうか?今回はジンフィズのレシピを中心にその由来についてご紹介しました。
今回、誰が作ったのかということを主眼において、ラモス説、トーマス説の2つを紹介しました。130年以上も前のことなのではっきりしたことはわかりませんが、こうやって昔に思いを馳せることにはロマンを感じますね!
また、「フィズ」は日本で言えば「シュワシュワ」という擬音ということで、その名付け方に可愛さを感じますね。
作り方などの疑問・質問はコメント欄によろしくお願いします!ではでは、また次の記事でお会いしましょう!